1853年に造られた巨大な4本のレンガ塔。ガウディの初期のレンガ建築を彷彿させるこの異形の構造物が伊豆にある。遥か江戸時代の建築であるこの構造物の謎に迫った。
紺碧の空に威容を誇る塔4本。
いかなる類推をもってみても、これが何のために建造されたのか、見当がつかない。 耐火煉瓦で組み上げられたこの構造物の名称は「反射炉」である。 名前を聞いても、いや、名前を聞くとなお、それがどういう意図で作られたものなのかが不明になってくる。 まさに予定調和を超えた現実が目の前にそそり立つ。芸術である。 平成27年7月、この韮山反射炉を含む「明治日本の産業革命遺産」が世界文化遺産に登録されている。 |
この建造物は要するに鉄を溶かして大砲を作るプラントである。石炭の燃焼熱をレンガに反射させて、その熱で鉄を溶かす。それで「反射炉」という。
当時、すでに頻繁に来航していた黒船に対する江戸湾防備のため、伊豆代官、江川太郎左衛門(坦庵)氏により施工されたものだそうだが、鎖国していたこの当時にあって、少ない資料をもとにこれだけのシステムを作るのは、ある種創造力を要したのではないかと思われる。 それだけに、この独自の形状ができたのであろう。 |
4基の炉で溶かされた鉄がここから流れ出る。まるで駅の券売機のようだが当時ここから真っ赤な鉄が流れ出ていたときは相当な熱気に包まれていたことだろう。江戸時代にこんな近代的な「製鉄所」があったとは驚きである。 |
この反射炉で最も多く製造された、24ポンドカノン砲(レプリカ) 東京お台場に設置されたという。 |
レンガ塔の周囲をガッチリ固めている鉄骨は耐震補強ということらしい。
これがまた、レンガの地紋と相まって、現代的なインスタレーションを構成している。「外鉄骨」という構造の煙突というのはこの構造物以外、おそらくどこにもないのではないか? 単なる様式美というだけでなく、地震半島といわれるここ伊豆半島で、江戸時代の建築物を現代に残しているこの補強は、耐震補強の鏡というべきだろうか。 |
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