まるでデコレーションケーキの上にでも乗っていそうな、クリーム色したかわいい洋館。上野の不忍池のほとりにある旧岩崎邸である。
ここはドーリアドーリア式の柱に支えられた車寄せのある中央塔。木造とは思えない重厚さが漂っている。
それにしてもこの手のこんだ装飾の数々はどうだろう。住居という枠に捉われ、無駄をそぎ落とした現代建築の対極にある造形がここにある。
館の中心から宇宙に向けて、強力なメッセージを放っているようだ。
中庭への出入口の階段。天井まであるドア、人間の胴回りより太い柱。モザイクのポーチ。これらは、必要に迫られて造られるという発想からは出てこない造形である。 |
足元はモザイクタイルが敷き詰められ、巨大な柱が林立する。まるで西洋の駅のプラットホームのようである。 |
巨大なドーリア式柱が林立するベランダ。庇も肉厚である。
側面、天井、そして壁面のそのすべてに繊細なモーリンクがされている。まさに宮殿である。 |
住居本体を防備するような印象のサンルーム、ベランダ、ポーチ。そのすべてが巨大である天井が人間の3倍はあるのである。 |
サンルーム前景。一面の窓・窓・窓である。 よく見ると石の土台がかなり高い。 日本の「縁側」のような、自然との一体化、自然の取り込みといった思想ではなく、はりめぐらした重厚なヴァリアと高低差により、自然の征服といった立場をとる。こんなところにも当時の日本にはない、西洋の思想を感じるのは気のせいだろうか? |
明治の東京に忽然と現れた西洋の館に、なぜか裸子植物がよく似合う。この光景を当時の日本に登場させたそのエネルギーこそ、現代日本が今、一番必要としている力ではないだろうか?
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