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アーク溶接機インプレッション

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初めての溶接DIY 廉価版・アーク溶接入門機使いこなしのコツ

DIYの中でも、かなり難易度の高い部類に入るのが溶接である。日常的に溶接をDIYしている御仁もあまりいないかもしれないが、金属同士を接合する技術は非常に役立つものだ。門扉の改造、フェンスや玄関への、ロートアイアン風装飾の設置。遊具の修理など、今までに未着手の分野にデザインワークが広がるのである。ぜひ取得したいのが溶接である。

今回テストしたのはスター電器製造の「ホームアークナビプラス」(SKH-40NP)。
コンパクトでなかなかよくまとまったデザイン。重さ6kgと片手で楽々持てる。溶接機というと200Vの電源が多いが、これは家庭用コンセント電源がそのまま使えて、1.2mm~3.0mmの鉄板が溶接できるという性能である。なんと言っても安い! 通常35,000円前後の価格帯で販売されているというが、1万円台で売られているホームセンターもあった。「未経験だけど、ちょっと試しにやってみたい」というモチベーションで、しかも性能、デザインなどを考慮した購入価格としては、この機種がベストではないだろうか。

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ところで、アーク溶接機は一般に「使用率」というのがある。超高電圧を出力するアーク溶接機は、使用したらしばらく休み、また使用したらしばらく休み、というサイクルで使うのだが、当然、この使用率が高いほど作業効率は上がる。「ホームアークナビプラス」は20%だ。10分のうち、実働が2分。まあこの低価格帯でこの使用率はかなり優良である。以前使用していたものは10%程度であった。

■装備を確認
高電圧が流れ、数千度の温度を発し、また太陽のような光を発する機械である。いきおい装備は他のDIYに比べ重装備となる。

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★遮光面
溶接の代名詞のような面である。マドに付いた色ガラスは真っ黒だが、これでもスパークが飛ぶと溶接点は明るく見える。

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この面ナシで直接溶接点を見ると・・こんなふうになっちゃうよ!

また、スパークは高温の「火の粉」が飛んでくるので、顔面の保護として面が必要である。

★皮手袋
感電・引火防止のため皮手袋を使用する。軍手は不可。できれば写真のような肘までカバーするものがあればベター。スパークの火の粉から腕を守ってくれる(ちなみに写真はカッパドキ~ア愛用の旧日本海軍パイロット用皮手袋)。

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■ワザ1・電極をほじり出せ!
さて、ここからはカッパドキ~アの体験による実践編である。正式なマニュアルにどう書いてあるかは知らないが、「電源を入れ、電極を近づけても、スパークがぜんぜん飛ばないよ!」という問題にまず突き当たる。鉄板に電極を当てても何の反応もないのである。こうなった場合、電極棒の先っちょをペンチでガジガジと挟み割り、中の電極を露出させる。この電極を鉄板に近づければ、まず間違いなくスパークは得られる。

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■ワザ2・廉価版のほうが実は難しい(?)スパーク開始!
いよいよスパークだ! テレビでよく見る、造船所の工事みたいでかっこいいゾ! と思ったのもつかの間、次の問題が起こる。
「電極棒が鉄板にくっついてしまい、離れない!」
「電極が鉄板からちょっとでも離れると、とたんにスパークが止まる!」

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スパークを途切れさせず、一気に溶接が肝心だ。
「引火」しやすいチャンスポイントは、電極が真っ赤になっているとき。この赤みが冷えてなくなると、再びまた引火しにくくなる。

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ここが「アーク溶接機は廉価版のほうがかえって難しい」といわれる所以なのだが、出力が小さい溶接機は、溶接棒を鉄板ギリギリまで接近させないとスパークが得られない。

この「ホームアークナビプラス」の場合、スパークさせるためには鉄板との間隔を約0.5ミリ前後でキープし続けなければならない。しかも、電極棒が細いためにスパークするとどんどん棒が短くなり、急速に鉄板との間隔が空いてくる。なくなっていく部分をすかさず補充、つまり指を鉄板に近づけてていくこの按配に慣れないと、スパークしてもすぐに消えてしまうのである。この感覚を身につけるのは鍛錬が必要だ。

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■ワザ3・魚のウロコを重ねた形を作れ!
さて、なんとかスパークを維持できるようになったら、次は溶接ラインの形成である。溶接は鉄板を高熱で溶かすことが目的だから、なるべく同じ場所に溶接棒が居続けるほうが、鉄を温める時間を長くでき、鉄を溶かすことができる。そのため、溶接棒はただ左から右に動かすのではなく、「クルンクルン」と円を描きながら動かす。円の直径は5ミリくらいを意識するといいようだ。

こうして溶接ラインを作っていくと、ラインのできあがりが「魚のウロコを重ねた形」になるはずである。この形できれいに一直線が引けるようになれば合格といったところか。

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溶接機は本格的なものになるとそれこそ何十万もするし、また電源設備なども新たに設置しなければならないなど、けっこうな投資を必要とするものだが、こうした「本気」モードの機種が必要かどうか試してみるという意味では、今回の「ホームアークナビプラス」のような廉価機種はありがたい存在だ。ただ、やはり「入門機」という意味においては、アーク溶接機は低価格のもののほうがかえって難易度は高いという一面があることを押さえておきたい。

とにかく鉄板に溶接棒がくっついては泣き、離せばスパークせず、そうこうしていると使用率オーバーでしばらく動かなくなる…そんな条件を制するにはやはり習熟が必要だ。また、低出力ゆえにカタログデータの「3ミリ厚」の鉄板であっても、熱伝導で熱が逃げ易い、大きな鋼板では鉄が溶けないなど、用途はかなり限定されたものになる。ただ、この機種への習熟訓練を重ねれば、鉄線アートなどで使える分野もある。まずはアーク溶接に慣れ親しんでみるという、そんな一歩を踏み出してみるのも面白い。



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