創造の泉

中銀カプセルタワービル

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1960年代に勃興した建築・都市デザイン運動「メタボリズム(新陳代謝)」の象徴的建築物が、今も東京銀座のど真ん中に建ち、アヴァンギャルドなオーラを放ち続けている。

高度成長下の只中にあった当時、アメリカの模倣だったさまざまな文化や構造物から脱却し、21世紀の建築や都市のありかたに対し意欲的に創造が始まったそんな時期の建築物だ。創造の試行錯誤が現実の構造物となって実際に建築されるという類い稀な時代の生き証人である。


中銀カプセルタワービル01 JR新橋駅から徒歩10分足らずの場所にそれはあった。「ビルは四角」という前提がすでに無い。まだ「ビルディング」という概念のない子どもに、「これがビルディングだよ」とこの建築物を見せれば、おそらくビルという構造物の概念が全く異なった人間を作り出すことができるだろう。

円形窓がぽつんとひとつついた箱形ユニットが、まるで子どものブロック遊びのように積み上がっている。しかも縦組み、横組みが混ざっている。整然と論理だっているようで、じつは人間的な遊び心を感じるのはこのへんの造形によるのかもしれない。

特撮ミニチュア風に撮影してみた。後ろから怪獣が現れたとしたら、このビルはさしずめ科学特捜隊の基地といったところだろうか。

カプセルユニットが140個、中央のコンクリートの支柱にボルトのみで固定されているという。取り付けはクレーンを使い、プレ生産のユニットをまるで部品をけ取り付けていくように装着していったというから、その様子は従来の建築現場とは一線を画した光景だったことが想像できる。現在の宇宙ステーションの組み立てに近い光景だったのではないか。

最上段で横向きになっているユニットに注目。何か地震でもきたら、コロンと落ちそうである。ユニットの下に建物がなく中空であるから、これは床が抜けたら大変である。

などと無用な心配をしてしまう。通常のビルでこんなことを考えることはない。やはりこの建物はアヴァンギャルドな人間にこそ相応しい住居なのであろう。

 中銀カプセルタワービル02

 中銀カプセルタワービル03 天空ににょっきりと突き出ている2本の尖塔には空調装置などが収められているということだが、空に向かって伸びる爪のようだ。カラーリングがまた絶妙である。

 

この世に存在しているものには2種類あって、それは
時代を超越できるもの、時代に忘却されていくもの。
この2つではないだろうか。前者を今、目前にしているこの感慨を、人生であと何回体験できるだろうか。竣工は 1972年(昭和47年)。35年以上前の日本でこのデザイン。驚愕である。
 中銀カプセルタワービル04

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