まるでアンコールワット!?
西洋と東洋が「溶け合う」大正建築の奇跡
大正12年(1923)年、アメリカの建築家フランク・ロイド・ライト設計により東京都千代田区内幸町に建設されこのホテルの中央玄関部が、名古屋の明治村に移築保存されている。
皇居を正面にした東京の超一等地にあって総面積34,000㎡余という広大さも圧巻だが、その独創的な建築デザインがすばらしく、単なる高級ホテルというだけではないアーティスティックな魅力に溢れる造形美ホテルであったといえる。設計はアメリカ人だが西洋建築とはいいきれない作りであり、あえて言うならば「西洋人が見た東洋建築」というコンセプトだろうか。アンコールワットのような複雑でオリエンタルな造形美を感じるのである。ジェームス・ボンドの映画に出てくる日本のホテル、というとこんなイメージではなかったろうか。 |
メインロビー中央には三階までの吹抜けで、ここから四方に階段が延びており、中央玄関内の全ての空間はこの吹抜けの廻りに展開し、その個々の空間は、床の高さ、天井の高さがそれぞれに異なっている 今自分が何階にいるのかわからない。このような立体的な階構成は当時としても世界的にあまり例がなく、その設計の独創性には驚くばかりだ。
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壁、床、手摺などあらゆる部分に幾何学模様の彫刻が入っており、レンガのひとつひとつに櫛目が入っている。これがこの建築物に東洋的な神秘性を与えている。 |
工法は鉄筋コンクリートをコンパネで覆ってモルタルを流し込む従来の方法ではなく、レンガを型枠とする構造である。非常に手間と時間がかかる工法だが、積上げたレンガの微妙な造形が生きた、工芸品的仕上がりが得られる。コンパネをはがした打ちっぱなしコンクリートに、ペラペラのレンガチップをはりつけるといった工業製品とは一線を画く芸術品だ。この工法はカッパドキ~アの「アリ塚はガウディの香り」と同一である。 |
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