のどかな多摩丘陵の中腹に、ひときわ異彩を放つこのデザイン。巨大なコンクリートの円柱に洋瓦、直線部分がほとんどないこの特異な建築物。何とできたのが昭和5年というから驚きだ。昭和5年といえばまだ茅葺の家でカマドを使って炊事をしていた頃である。
この建築物は明治天皇が狩猟のためこの地を訪れたこと記念して、元宮内大臣であった、田中光顕が記念財団を設立し、その資金で建てたという。現在は資料館やギャラリーとして一般に公開されている。因みに天皇が行幸された地を「聖蹟」と呼び、全国にこの冠がついた土地がある。
それにしても斬新なデザインである。2段型のデコレーションケーキ型の構造物の約半分をこのコンクリートの円柱と階段が占めている。
この建物を設計した関根要太郎は、20世紀初頭にヨーロッパでおこった建築革新を目指す運動に関心をもった建築家といわれており、その中でもこの記念館は、オーストリアでおこった「セセッション」と、ドイツの「ユーゲントシュテイル」と呼ばれる建築デザインの影響を色濃く反映していると言われる。まさに「建築革命」を目指すDIY建築革命団カッパドキ~アに多大な影響を与えることになるだろう。
「仮面ライダー」のロケに使われ、ここでライダーと死神博士が死闘を繰り広げた。現在は多摩市の市指定有形文化財に指定されている。昭和5年(1930)/設計:関根要太郎/施工:大倉土木(後の大成建設) 。
MAP